瀬戸の海でさわらが多く捕れる時期に、讃岐の農家でさわらを買って、たくさんのさわら料理を作り、親戚縁者を招くことを「春祝魚(はるいお)」、「麦うらし」、「さわら初穂」と言う。この時の料理の主役となるのが「押し抜きずし」。さわらの酢じめと空豆、たまご焼き、さんしょが欠かせない。間にはたけのこやふきなどの春の味覚をはさみ、そのやわらかな色合いが春の訪れを告げる。郷土食豊かな讃岐の味として親しまれている。
春から初夏にかけて、そら豆が実り、麦が熟し始めると、脂がのったサワラが外洋から瀬戸内海に入り、サワラの旬がやってきます。讃岐の農家では、麦刈りや田植え前の農閑期にサワラ1本を手に入れ、さまざまなサワラ料理を作り、親戚や知人を招いて酒宴を催す「春祝魚(はるいお)」という習慣があります。この「春祝魚」の主役は、サワラの「押し抜きずし」です。また、若い嫁のいる家庭では、姑がサワラを買い、南天を添えて魚箱に詰め、それを持たせて嫁を実家に里帰りさせます。里帰りした実家では、「春祝魚」を楽しんで、嫁は実家で作った「押し抜きずし」を手土産として婚家に持ち帰り、実家と婚家の絆を深める機会とされています。サワラの「押し抜きずし」による「春祝魚」は、地域によっては「麦うらし」や「サワラ初穂」と呼ばれ、同様の習慣が残っています。
食べる機会や時季は、サワラ漁が盛んな4月下旬から6月にかけてです。具体的な食べ方は、型に詰めた寿司飯の中に、煮た野菜の小切りを挟み、その上にサワラや山椒、そら豆、エビ、卵焼き、きぬさや、紅しょうがなどの具材を彩り良く配置して、型から押し出すというものです。押し型は四角や扇、松、梅など様々で、旬の食材を取り入れて彩り豊かな料理となります。
主な伝承地域:県内全域
主な使用食材:米、サワラ、そら豆、卵、しいたけ